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薬剤師の活動に化学を活かす。

更新日:2月13日

研究室訪問



 

高橋 秀依 教授

たかはし・ひでよ創薬研究の第一線で活躍する一方、医療現場で活かせる有機化学の研究にも取り組む。有機化学をもっと身近に感じてもらいたいとの思いから、最近では一般読者向けに食べ物や飲み物にまつわるサイエンスを解説した書籍の翻訳も行っている。

 

 私たちの身の回りにはたくさんの有機化合物があります。有機化合物とは炭素を含む化合物のことで、炭素骨格を構造の基本として、決まった分子構造を持っています。私たちの体も炭素を中心とした有機化合物が組み合わさってできた有機体と言えます。その体に作用する薬も、多くが有機化合物からできています。有機化合物について考えるのが有機化学です。

 有機化学の知識を持っていればさまざまな場面で活用できます。例えば、ある薬とある薬を混ぜて沈殿ができた時、何らかの化学反応によるだろうことは、有機化学を学んでいる薬剤師なら誰でも考えられます。薬の構造を知ることで、治療薬の効き目や副作用といった特徴をつかむことができ、薬物治療においては安全面だけでなく、効果的な医療サービスの提供にもつながります。

 私たちの研究室では有機化学の知識や実験技術を駆使して社会に起こっている問題にも取り組んでいます。その一つが覚せい剤や麻薬に似た作用を持っている危険ドラッグです。国は法規制を厳しくし、取り締まりを強化していますが、撲滅に至っていません。ある物質を規制したとしても、その規制を逃れるため、分子構造の一部を変えた新たな物質がつくられるという、いたちごっこの現象が生じているからです。しかし、類似の化学構造を持つ多くの化合物をあらかじめ合成し、新たな危険ドラッグの出現に備えることができれば、その蔓延を防ぐことができます。私たちの研究室では危険ドラッグの検出に役立つ化合物を数百種類合成して化合物ライブラリーをつくり、薬物捜査などに携わる公的機関に提供しています。その一方で、都合のよい作用だけを残せれば、新しい医薬品の開発につながるのではないかと期待しています。



 危険ドラッグの研究は、法規制により大学のような公的機関でしか取り組めませんし、特殊な設備と高度なスキルがなければ、研究を行うことはできません。何より重要なのは、高い倫理観と見識をもって社会に役立つ研究を行う、という意識だと思います。

 有機化合物は化学構造式で表されますが、その立体的な構造をより詳しく知ることで、より効き目の高い薬を生み出すことも可能になります。こういった最先端の薬をつくる創薬化学研究は毎日ドキドキするような経験を与えてくれます。

合成のための試薬を調製
合成のための試薬を調製
類似化合物を化学合成
類似化合物を化学合成
合成結果をディスカッション
合成結果をディスカッション
危険ドラッグとの類似性をディスカッション
危険ドラッグとの類似性をディスカッション

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