化合物の目線から生命現象と対峙し、病気の治療や健康増進に貢献する。
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更新日:2月13日
研究室訪問


髙山 健太郎 准教授
たかやま・けんたろう●「ペプチドが担う生体機能制御」をキーワードに、これまでに薬物デリバリーツール、診断薬、創薬に関する研究に携わってきた。独自に創り出したペプチドが、疾患の予防や治療のみならず、生命現象の解明に貢献できることを願っている。最近は、ペプチドやタンパク質のアミノ酸配列に秘められた進化的な意義にも興味を持っている。
遺伝子変異によって筋肉を構成するタンパク質の機能が障害され、筋力が弱くなっていく病気である筋ジストロフィーは指定難病であり、厚生労働省の資料によると患者数は推計で2万5400人いるといわれています。発症メカニズムは解明されてきていますが、根本的な治療法はまだありません。
私は、筋肉の萎縮を改善する治療薬の開発につながる研究を行っています。生物が活動する上で、筋肉は適切な大きさになるようバランスが保たれているのですが、その中で増えすぎないように抑制する働きをしているタンパク質としてマイオスタチンがあります。マイオスタチンの働きが過剰になると筋肉は萎縮しますが、逆に、この働きを阻害する医薬品を開発することができれば、筋ジストロフィーなどの筋萎縮病態に苦しむ患者さんのQOLを向上させることができるのではないか、ということで世界的に研究が行われています。
私はマイオスタチンの働きを阻害する化合物としてペプチドに注目しています。ペプチドはそんなに大きな分子ではないため体外へ排泄されやすく、また酵素による分解を受けやすいために、体内で利用されにくいという医薬品開発上の障壁があります。これをできる限り解消するために、私はマイオスタチンに強く結合し、分解されにくいペプチドを合成しました。このペプチドを使って筋ジストロフィーのモデルマウスの筋肉に注射したところ、筋肉量と握力が20%以上増大しました。次のステップでは、どのようにペプチドを投与すれば全身の筋肉に行きわたるのかということが課題になります。

筋肉量の低下については、高齢者が増えている現代社会において問題になっています。加齢による筋力低下は転倒に結びつく要因の一つといわれています。高齢者にとって転倒による骨折は健康寿命を短くする原因の一つともされているため、未然に転倒を予防することは健康的な生活を送るうえで非常に重要です。その対策の一つとして、筋力強化が健康増進につながるのではないかと言われており、私の研究がそこに寄与できないかと期待しているところです。
薬学部における衛生化学は化学物質の人体への有益性と有害性の機構を分子レベルで解明し、病気の治療や健康増進に貢献する学問なのです。



