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ドラッグデリバリーシステムの技術を活かして社会貢献。

更新日:4月2日

研究室訪問



 

丁野 純男 教授

ちょうの・すみお大学院生時代より一貫してドラッグデリバリーシステム(DDS)の研究に取り組んでいる。これまで、病気の治療や診断を目的とするDDSの開発に注力してきたが、最近では、視点を広げ、地球環境の浄化、寄生虫・害虫駆除、花卉(かき)の品質向上などにDDSを応用する研究にも着手している。

 


 薬の有効成分を作用させたい部位、すなわち病気の臓器や組織・細胞に効率よく届けることができれば、患者さんは副作用の心配をすることなく、安心して治療を受けることができます。しかし従来の薬は、有効成分が作用部位に届くのはごくわずかで、大部分は正常な部位に行きわたるため、薬が十分に作用しなかったり、副作用が発現したりするのです。このように今ある薬が万能というわけではなく、薬の有効成分を効率よく目的の部位に届ける技術「ドラッグデリバリーシステム(DrugDeliverySystem:DDS)」の研究が活発に行われています。

 私たちの研究室では、この技術を活用して肺がんの治療薬、感染症の治療薬、繊維症の治療薬の開発につながる研究を行っています。例えば、肺がんの治療薬では、薬物を運ぶ運搬体の中に肺がん細胞を攻撃する成分を入れ、さらに肺がん細胞を認識する成分を運搬体の表面に付加した薬を肺がんマウスに投与すると、未処置のマウスに比べ、がんの増殖が抑制されただけでなく、生存日数も延びる結果を得ることができました。




 最近取り組んでいるのが、寄生虫の駆除を目的とした研究です。近年、アニサキス(寄生虫の一種)による食中毒が話題になっています。アニサキスは、鮮魚介類を介して体の中に侵入し、胃に突き刺さることで、激しい痛みを生じます。食前または食中、食直後にアニサキスを撃退する成分が胃の中にあれば、この症状をなくすことができるのではないかと考えたのです。まずはアニサキス撃退成分を探しました。この成分は天然ハーブ由来の油性成分だったため、胃の中に投与しても胃液表面に浮き、アニサキスに曝露できませんでした。そこで成分が胃液に均一に混ざるようにするためにDDS技術を付与しました。それをあらかじめアニサキスを注入したラットに飲用させたところ75%のアニサキスが死滅したのです。この成分は食品添加物に指定されているので、医薬品開発のように長い年月をかけなくても市販化することができるメリットもあります。現在、市販化に向けて特許出願中です。

 また私たちは、DDSの技術を転用して、水や土、空気中に含まれている汚染物質の回収、すなわち環境問題解決にもつながる研究を行っています。

 このように薬学は、人々の健康だけでなく、環境問題にも活用の場があり、無限の可能性を秘めた学問なのです。固定観念にとらわれず、科学の力で社会貢献したいと思っている方はぜひ薬学部を目指してほしいです。


実験結果をディスカッション
実験結果をディスカッション

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