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血液検査による精神疾患の診断法を考案する。

更新日:2月13日

研究室訪問



 

福島 健 教授

ふくしま・たけし生体内に存在する薬物ならびにその代謝物、内因性生体分子の濃度を正確に調べるために、精密な機器を活用しながら分析化学を基盤とした研究を行っている。最近、脳の病気として捉えられている精神疾患患者の血液中の数種の生体分子濃度が健常人と比べて、有意に異なることを発見し、この現象と精神疾患との関連性について、医学部精神科の医師と共同で研究を進めている。

 

 近年、統合失調症やうつといった精神疾患を抱える患者さんが増えています。精神疾患は早期の治療が必要ですが、精神疾患を発症する可能性の高い(ARMS)患者さんの診断が難しいという課題があります。精神科の領域は、高血圧症や糖尿病などのように血圧や血糖値といった検査値(数値)を使った客観的な診断法が確立されておらず、医師の知識や経験などの主観に診断結果が左右されやすい問題があります。そこで私たちの研究室では、医療機関との共同研究で血液検査を利用した診断法を確立することを目指しています。

 その研究の中で健康な人と精神疾患の患者さんの血液を調べると、抗酸化物質の一つであるグルタチオンの濃度が低いこと、脳内における代表的な神経伝達物質であるグルタミン酸の濃度が高いことを突き止めました。いずれも精神疾患の患者さんに影響が出るといわれている物質です。

 また、精神疾患の患者さんに処方される抗精神病薬は、副作用が起こりやすいため、医師はカウンセリングなど、薬に頼らない治療を行うことも少なくありません。特に発症前の患者さんについてはなおのことです。そこで私たちは、研究成果を療法に活用できれば、ARMSの患者さんに対する有効な治療法になるのではないかと考えています。例えば、精神疾患に関連するといわれている不飽和脂肪酸が少なければ、それを多く含む青魚などの食品をとるようアドバイスするといったことです。

 血液検査を使った診断法が確立できれば、医師の経験に左右されない診断法の確立だけでなく、早期発見にもつながるのではないかと考えています。私たちが研究している薬品分析学は、主に体内にある薬や生体分子を測定する方法などを開発する研究ですが、このように、臨床現場で問題になっている課題の解決にも取り組んでいます。

分析のための血液試料を調製
分析のための血液試料を調製
分析結果を観察
分析結果を観察
分析結果を吟味
分析結果を吟味
精神疾患との相関をディスカッション
精神疾患との相関をディスカッション

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